21:23 15-11-2025

フィアット600誕生70周年 名車の精神を現代のコンパクトSUVに再解釈、アバルト仕様も

フィアットは、ブランドを代表するモデルのひとつである「600」の誕生70周年を祝った。1955年から1982年までに4,939,642台が生産され、この小さなクルマは戦後ヨーロッパにおける手の届く移動手段の象徴となった。生産拠点はイタリア、アルゼンチン、チリに広がり、ユーゴスラビアとスペインではライセンス生産も行われ、スペインでは「SEAT 600」の名で販売された。

ダンテ・ジャコーサが手がけた初代フィアット600は、潔い設計で際立っていた。コンパクトなボディに、後部に積まれたエンジンとトランスミッション、そして着脱式シートを備えた実用的なキャビン。今となっては当たり前に見える定石だが、当時は驚くほど効いた――低コストで扱いやすく、狭い街中でも長距離でも気負わず使える。そうしたバランスの良さこそが、愛された理由だと感じる。

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節目に合わせて、フィアットは現行の「600」をテック志向のコンパクトSUVとして再解釈したと説明する。クラシックへのさりげないオマージュをまとい、よりスポーティに振ったアバルト仕様も用意される。家電のように親しまれた車名を都市に強いSUVへと仕立て直すのは、今の潮流では理にかなっており、ヘリテージの引用が狙いどおりの説得力を与えている。

刷新されたフィアット600は、持続可能性への期待に応えつつ、シティカー分野で最良の選択肢を目指す流れに歩調を合わせているという。メーカーは、電動化が進む市場に合わせてフォーマットを変えながらも、初代の精神を守る狙いを強調する。狙いは明快だ。600が価値を持った「手に入りやすさ」と「毎日の使い勝手」を受け継ぎ、それを現代の文脈にきちんと翻訳すること。道筋としては、十分筋が通っている。