10:19 23-11-2025

米国と欧州でウインカーが赤とアンバーに分かれるワケ—規制が招く設計・認証・コストの分断

米国車と欧州車の違いは一目でわかる。米国では後部ウインカーが赤く、欧州ではアンバー(琥珀色)に光る。この差は購入者の好みではなく規制に由来する。欧州はECE R48でアンバーを義務づける一方、米国のFMVSS 108はアンバーを認めるにとどまると、自動車専門家のドミトリー・ノビコフ氏がTarantas Newsの取材で指摘している。見た目は些細でも、設計・試験・調達に至るまで波紋は大きい。各社はリアランプを二系統で用意し、認証も二重化し、製造ラインまで分ける羽目になる。

技術的な事情は溝をさらに深くする。欧州向けの灯体は明るいアンバーを前提にチューニングされており、その同じレンズで赤を出すと米国の測光要件を満たせない。汎用モジュールにしようとすれば、LEDの増設や光学の見直しが不可欠で、コストは上振れする。さらにリアフォグも厄介だ。EUでは義務だが米国では必須ではないため、多くのブランドがハウジング設計を作り直さざるを得ない。ワンサイズのランプが標準解にならない理由が、ここではっきり見えてくる。

信頼性も無視できない。色を切り替えられるマルチチャンネルLED基板は発熱が増え、BMWの社内データでは故障率がほぼ倍だという。長い保証を課す市場では大きなネガで、メーカーが慎重になる背景として十分だ。ユーザーの安心を考えれば、ここで冒険しづらいのも理解できる。

一部のモデルでは、リアフォグ用ハードや追加光学をそもそも省き、バージョン間の違いをソフトだけにとどめるアプローチも見られる。先を見れば、統一設計は十分に現実的だ。同じLEDを使い、輝度はソフトで制御し、使わない機能はロックしておけばよい。ハードを簡素化し、バリエーションはコードで握るという発想だ。とはいえ、パッチワークのように入り組んだ現行規制が分断を生かし続けており、当面はこの二重構えが続きそうだ。