22:34 08-12-2025

CheryとHBISが2400MPa級ホットスタンプ用鋼を公開 成形性と工程安定性を確保しつつ安全性向上へ

Cheryと冶金大手HBISが、引張強度2400MPaの新しいホットスタンプ用自動車鋼を世に出すと発表した。量産で一般的な水準が1300~1800MPaにとどまっていたことを思えば、一段上の到達点だ。これまでは強度を欲張れば延性や加工のしやすさが犠牲になる――その古典的なトレードオフが壁だった。

今回の材料は、その縛りを緩める狙いだと説明される。開発陣によれば、強度を引き上げながらも実用的な成形性や工程の安定性は手放していないという。安全要件の厳しい部位での耐衝撃性向上、板厚を落として車両質量を削る可能性、超高強度鋼でしばしば問題となる脆さのリスク低減――彼らが強調する効能はこの三点だ。生産ラインでそのバランスが再現できるなら、ボディ骨格の設計者にとって長年の悩ましさが和らぐはずだ。

効果が最も効くのはどこか。熱間プレス材は安全セルの要、A/Bピラーやドア補強、ドア開口部の部材、フロアクロスメンバーなど、衝突エネルギーを受け止める領域を支えてきた。Cheryは、この新グレードを実部品で試し始めていると明かしている。サイドインパクト用ドアビームで試作成形から車両への組み付け、複数回の検証までを実施。機械特性の安定、管理可能な成形ウインドウ、そして形状精度の確保という結果を得たとしている。単なる数値の誇示にとどまらず、工程の扱いやすさにまで踏み込むあたりが現実的だ。

次の段階は、ボディの他の構造部材へと適用範囲を広げることだという。公表された特性が量産でも裏付けられれば、強化された安全性能と重量増回避の両立という、めったに手に入らない組み合わせが見えてくる。コストと効率の面でも歓迎される結果で、どのメーカーにとっても数字を良くする材料になり得るだろう。