ボルボは、自動車安全の歴史を変えた技術に再び注目している。1959年に同社が導入した三点式シートベルトに続き、今度はその進化形として、2027年発売の電気SUV「EX60」にマルチアダプティブシートベルトを搭載する。

このシートベルトの最大の特徴は、乗員に合わせて挙動を変えることだ。車内のカメラやレーダーから得たデータをもとに、身長、体重、体格、座席位置を認識。従来のシステムでは衝突時に3種類のプロファイルしか持たなかったが、新型は11種類に増やした。

データ処理を担うのは「HuginCore」という中央プロセッサ。もともと乗員監視システム「No One Left Behind」のセンサー情報を活用し、ベルトの張力をより素早く、正確に調整できる。

ボルボの新しいシートベルトのデザイン
volvocars.com

ボルボによれば、このシステムは無線アップデートに対応している。上級テクニカルアドバイザーのトーマス・ブロバーグ氏は、実際の走行データを収集・分析し、その結果をOTAで反映させることで、車の寿命を通じて安全性を高められると説明している。

狙いは単にベルトを柔らかくすることではない。衝突時に乗員を確実に拘束しつつ、よりきめ細かい制御を実現する。特に妊婦や高齢者、虚弱な乗客にとって、全員に同じ力を加えるのではなく、個別に対応することが重要になる。

デモでは、新型ベルトはゆるやかに力を加え、急な引き込みを抑えていた。ドライバーからは見えない技術だが、必要な時に確かに機能する。

EX60はこのシートベルトを初めて採用する量産車となる。写真では地味に見えるかもしれないが、画面の大型化やパワーアップよりもはるかに価値のある安全アップデートと言える。