裁判所は今回の判断で、いわゆるあらかじめ設定された冷却水温を調整するシステムの技術的な適法性は検討せず、形式面に絞って判断した。命令を無効とした理由はただ一つ。型式認可に関する旧指令はすでに欧州規則に置き換えられており、法的基盤が時代遅れだったからだ。技術論に踏み込まないままでも、手続きが結末を左右する――そんな現実を思い起こさせる一件だ。

この結果、当該命令は法的効力を失った。当局が控訴に踏み切るかどうかは、いまだ見通せない。

影響を受けるディーゼル車のオーナーにとっては、義務がひとまず解除される。KBAが現行の法要件を満たす新たな命令を出すか、今回の判断に異議を唱えるまで、リコールの強制は停止されるからだ。運転する側には当面の重圧が和らぐ一方で、先行きの不確実さは長引く。

この決定は象徴的な意味合いも帯びる可能性がある。とりわけ、KBAが同様の論拠に依存する案件では影響が大きい。メルセデス・ベンツは、リコール要請の当初の法的基盤が脆弱だったことの裏づけになったと受け止めている。とはいえ、同社はリコール自体は進め、4年を経て140万台のほぼ全てに改修を実施済みだ。決着の行方は、KBAの次の一手に委ねられている。