欧州製スポーツカー=高額、というのが一般的なイメージだが、中古市場をのぞけば様相は変わる。予算は最大で1万5000ドルでも、人目を引くだけでなく、日常の移動を本気で楽しくしてくれる一台が見つかる。

中でも筆頭候補は初代ポルシェ・ボクスターだ。ミドシップのレイアウト、正確なハンドリング、自然吸気の水平対向エンジンがそろい、妥協のない本物のスポーツカーとして響く。歳月を重ねても魅力は色褪せず、ワインディングに持ち込めば、愛好家が思い描く通りの挙動を見せる。

有力な対抗馬は2代目メルセデス・ベンツSLK。格納式ハードトップを備えるコンパクトなロードスターは、快適性や通年の使い勝手を手放さずにスポーティさを求めるドライバーに合う。金属製ルーフは、変わりやすい天候のなかでも日常をぐっと気楽にしてくれる。

欧州派にはアルファ ロメオ・ブレラも捨てがたい。数字で勝負するクルマではなく、造形とキャラクターで惹きつけるタイプだ。自然吸気V6を積む仕様はとりわけ好まれ、いまのクルマが苦手とする感情の揺さぶりを与えてくれる。たたずむだけでも、ブレラは自分の主張を伝えてくる。

2代目アウディTTは、スタイルと実用性、そしてクワトロ四輪駆動を巧みに融合。Sなら俊敏で多才なスポーツマシンへと変わりつつ、日常のリズムにもきれいに収まる。速さと無理のなさを両立したオールラウンダーだ。

締めくくるのはBMW Z4(E89)。今回の顔ぶれのなかで最も新しく力強い選択肢で、本格スポーツに期待されるパフォーマンスを、一般的なモデルと肩を並べる価格帯で提供してくれる。ハンドルを握れば、群を抜いて現代的に映る。

どのクルマも、走る歓びは高くつく必要はないと教えてくれる。状態のよい個体を見極めて選べば、余計な出費なしに、スタイルと個性、そして十分な高揚感をもたらしてくれるはずだ。