日本全国でわずか80台。しかもその半分はディーゼルと本物のマニュアルミッションの組み合わせだ。ルノー・カングー クルールは、限定車でいちばん面白いバージョンがいちばん高いモデルではなく、いちばん古風なモデルだったという珍しい例である。6速MTを積むディーゼルの価格は449万円。つまり、ごく普通のディーゼルのカングーとまったく同じ金額だ。
もう一度読んでほしい。専用色も、無塗装のブラックバンパーも、追加されたトラクション制御も、ディーゼルを選ぶ人にとっては1円の負担にもならない。7速EDCを積むガソリンのクルールも同じ449万円だが、こちらは標準モデルに対して20万円、率にして約4.7%の上乗せになる。
そして、このディーゼルを本当に特別な存在にしている一点がある。通常のカングーのラインナップにMTは一台も残っていない。ガソリンもディーゼルも7速EDCのみだ。自分の手でギアを選びたいなら、限定車を追いかけるしかない。日本に用意されたのは合計80台。1.5リッターディーゼルと6速MTの組み合わせが50台、ターボガソリンと7速EDCの組み合わせが30台という内訳である。ディーゼルは116馬力と270Nm、1.3ターボは131馬力と240Nmを発生する。どちらも前輪駆動だが、渋滞追従機能付きのアダプティブクルーズコントロールが与えられたのは、自動化されたトランスミッションを持つガソリン版だけだ。
外から見てそれと分かるのはブルー ドラジェのボディカラーである。幸せへの願いを込めて贈られるフランスの伝統菓子ドラジェにちなんだ色だ。組み合わされるのは無塗装のブラックバンパー、昨年の改良以降は限定車と特別仕様車だけに許された装備である。さらに標準の17インチアルミホイールに代えて16インチのスチールホイールとオールシーズンタイヤ、そして滑りやすい路面でトラクション制御の働きを変えるエクステンデッドグリップが備わる。もちろん、これで四輪駆動になるわけではない。ルーフレールはどうかというと、こちらはディーラーオプションだ。
全長4490mmのカングーは、トヨタ・シエンタより230mm長い。全幅1860mmは165mm広い。狭い日本の駐車場では、この差ははっきり効いてくる。その代わり5人乗りの室内は775リットルの荷室を確保し、後席を倒せば最大2800リットルまで広がる。観音開きのバックドアは90度、あるいはほぼ180度まで開く。
販売方法は抽選だ。申し込みの受付は7月26日まで、希望者が台数に届かなければ残りは「先着順」の通常販売に回る。あわせて日本には7人乗りのグランカングー クルールも同じブルーで用意された。こちらは482万円で70台、ただしガソリンエンジンのみとなる。
本気でディーゼルが欲しくて、しかも自分でギアを操りたい人にとって、クルールはガソリンの特別仕様車より明らかに得だ。専用色もアウトドア向けの装備も限定車という肩書きも、通常のディーゼルのカングーに対する上乗せなしで手に入る。ただし、迷っている時間はない。MT車はたった50台である。