ロールス・ロイスは世界に1台だけのBlack Badge Ghost Tourist Trophyを仕上げた。その口実は漠然とした記念日ではなく、きわめて具体的な日付だ。120年前、チャールズ・ロイスがLight 20 H.P.を驍り、マン島ツーリスト・トロフィーを勝ち取ったのだ。今やTTという略語はオートバイと不可分だが、20世紀初頭のこのコースでは自動車たちが戦っていた。そして勝者の名簿には、ロールス・ロイスの創業者の一人が名を連ねている。
ボディーはEmerald Green、当時のレーシングカーを現代的に読み直したカラーだ。サイドには細いGhost Whiteのストライプが走り、その中に小さな「4」の文字。歴史的な1台のスタート・ナンバーだ。
インテリアはブラックとタンレザーの二色使い。蕀色はシートのインサート、パイピング、ステッチ、カーペットに使われている。リアシートにはマン島の輪郭が刺繍されている。そして、執念深いオーナーだけが見つけられるディテールがある。丸いエアベントの裏面には、歴史的なマシンのナンバープレート、シャシー番号、そしてShort Highroads Courseの座標が刻まれている。
機械的にはサプライズなし。ボンネットの下にはお馴染みの6.75LツインターボV12が鳨え、592hpと899Nmを生み出し、8速オートマチックと組み合わされる。駆動は4輪だ。古典的な意味でのスポーツモードはあめて設けていないが、シフトレバー上のLowボタンを押せば、ボックスの反応とアクセルペダルのアタックが鮮やかになる。
価格はいつものようにロールス・ロイスは明かさない。頭を揃えたBlack Badge Ghostの英国での始り価格はわずか32万5000ポンドだが、このone-offコミッションはそれをはるかに超えるはずだ。出力に金を出しているわけではない、しロドスはレギュラーと同じだからだ。金を払うのはものがたりのためだ。そして、ものがたりをそれほどまで丁寧に包むメーカーは、ロールス・ロイス以外に存在しない。